患者様がポツリと「先生、私呪われているかもしれない」と呟きました。思わず吹き出しそうになりましたけど顔を覗き込むと真面目な顔でしたのでグッと堪えました。そして訳を聞いてみると「毎晩3時ピッタリに目が覚めてしまうんです。それから暫く寝れなくなります」と。「なんだそんなことか」と思いましたけど凄く真剣なので「何か恨まれることでも有るんですか?」と尋ねると何も思い当たらない。「何か心配ごとでも有るんですか?」と尋ねても無いと応えられました。最後に「何で3時と分かるんですか?」と尋ねてみると「時計を見ると3時だからです」と言わたので我慢出来ずに不覚にも大声で笑ってしまいました。患者様に十分謝った後に『サーカディアンリズム(体内時計)』の話をしました。ヒトを外界と遮断して一切時間の経過が分からない部屋で1ヶ月間過ごさせる実験をすると1日のサイクルが25時間になったそうです。1時間のズレは有ったものの同じ時間に起きて同じ時間に食事をして同じ時間に排泄したそうです。ヒトは本来正確な体内時計を持っているので実際に時計が無くても太陽の光が有れば生活に支障無く暮らせます。しかし現代のように電気が有ったり携帯画面、テレビ画面等々からのブルーライトの影響で体内時計が狂ってしまうことが多くなり結果として自律神経が乱れてしまうのです。それを感覚的に知ってる人々は「規則正しい生活をしましょう」と言い続けているのですが最近は更に乱れてしまっています。テレワークの影響で仕事さえキッチリこなせば良いと遅く起きたり夜中まで働いたり深夜に食事したりと好き放題。そして体調不良で「何とかして」と来院されます。話を戻して冒頭の患者様には心配いらないことを伝えましたが一つだけ約束してもらいました。「目が覚めても絶対に時計を見ないこと」と(『鶴の恩返し』かよっ)。脳は思った以上に賢いのか律儀なのかアホなのか「あっ3時か。毎日午前3時に起きなければならないんだな」と勝手にインプットしてしまい毎日繰り返してしまうのです。それが本当に起きるべき時間なら快適な生活を送れるのですが当人にとっては迷惑な時間だった訳です。その後3日間は「時計を見たい」衝動と戦いながらも1週間ほどで起きなくなったそうです。皆様も蒸し暑さで目が覚めた時に「まだ暗いけど何時だよ」と時計を見ないで下さい。恨まれていたら寝れなくなるかもしれませんから(キャ~ッ)。