武道では昔から『心技体』と言いますが、その考え方は武道に限らず多方面に通じると理解していました。しかしまさか治療には無関係と思っていました。全快堂で治療をしていても『心技体』との接点など考えもしませんでした。しかし「体:先ず治療を施す側である治療家の身体が健康で無ければならない」という事。「技:治療技術は言うまでも無く必要」という事。では『心』は?だから今まで全く結び付かず「治療に心技体は無関係」と思っていました。しかし全快堂を開院して20年、それ以前から病院勤務して治療に携わってきて常に平常心を保てていたとは言えない時も有りました。若い頃の私は自身の体調が優れない時には、ちょっとした患者様の言動にもイラッとしたものでした。その体調不良の原因が患者様には全く関係ない「夜更かし、呑み過ぎ」ならば自己責任なのに『治療家失格』ですよね。そう考えると『心技体』のどれか1つ欠けても患者様の細かな身体の変化を分かる筈も無く、本当に良い治療など程遠いという結論に達したのです。しかし徐々に体力の衰えは誰にでも訪れます。体力が無ければ疲れ易く、そうなれば手抜きになります。そして手抜きを黙認してしまう自身の心が最初は抵抗しても体力同様、徐々に馴れてしまう=心が麻痺して「いけない事」と思わなくなる。ですから世間一般は弟子に任せて自身は第一線から退くのですが、すると「あっ」という間に『技』が衰えてしまいます。そこで私は今でも整形外科に行きます。個人でやれば頭を抑える人がいません。すると心が横暴になります。体力が衰えても雇われていればサボる事が出来ません。そして整形では210分で治療前の準備(道具を20点程配置と毎回ホワイトボードの書き換え)と30名程の治療をして再び片付けを完了し無ければならず、患者様に限られた時間の中で治療に満足させる事をしなければなりません。その為に馬鹿ですが常に一瞬で治す『北斗神拳の中のトキの拳』のような技を探し磨いています。先日は33名の治療をしましたが新患の方も多く、かなり神経を使いました。整形外科に行かない方が「楽だし、儲かるし、嫌な気分にもならない」事は分かっています。しかし『心技体』で未完成の私にはまだまだ「外の水」が必要なんだと思います。